案件タイプ
コーアツ工業はPC橋梁と基礎工事に専門性を持つが、市場縮小、ゼネコン参入、人材不足、コスト上昇が同時に進む。植村組系の一般土木・港湾・建築能力と組み合わせれば案件範囲を広げられる一方、地域公共工事への依存とグループ内取引の公正性を管理する必要がある。非公開化は連携情報を共有しやすくする手段である。
応募契約15.44%と不応募・議決権賛成契約30.04%を合わせると、取引前から約45%の支持基盤があった。下限36.63%は不応募株と合わせ株式併合に必要な議決権を確保する設計である。一般株主には価格の妥当性だけでなく、グループ関係者が残り、公開買付者だけがTOBで過半を取る最終構造の理解が必要だった。
読みどころ
技術補完と共同受注が実現すれば、単独では難しかった大型・複合案件へ参加できる。評価指標は共同受注額、受注時利益率、完成工事総利益率、技術者稼働率、資材調達単価である。規模拡大のために採算の低い案件を取ると価値を毀損するため、売上より工事別キャッシュフローと安全・品質を優先すべきである。
人材相互活用は不足解消に効くが、専門技術者を複数現場へ無理に配分すれば品質と工期に反作用が出る。上場維持コスト削減は確実性が高い一方、開示と市場規律も失うため、関連当事者取引の価格、少数株主を残す期間、グループ内案件配分を透明に管理する必要がある。非公開化後の統治設計がシナジーと同じくらい重要である。
1,840円は直前終値比10.91%、6か月平均比29.94%で、類似非公開化案件より高いとは言いにくい。ただし1,650円から複数回の増額交渉を経て最終価格となり、市場株価法上限を超え、DCF1,716〜2,086円の中に入る。簿価純資産4,181.94円を大きく下回るため、継続企業価値と保有資産の実現価値をどう見るかが評価の分岐点である。
一般株主は1,840円でPC市場縮小、人材不足、資材高のリスクを現金化できる。価格はDCFレンジ内で増額交渉の成果もある一方、直前プレミアムとPBR面では強い条件とは言い切れない。関係会社株主は30%を残し株式併合へ賛成するため、一般株主が上場株として長期保有する余地は小さかった。応募結果は下限を超え、公開買付者単独で過半となった。