案件タイプ
祖業のタンク・プラントは海外実績を持つ一方、汎用品化と価格競争にさらされ、案件を担う技術者の不足も深刻だった。脱炭素投資が水素・アンモニア貯槽の需要を生む可能性はあるが、材料、溶接、検査の技術開発と大型案件の管理能力を需要発生前に準備する必要があった。
本件の株価プレミアムが大きいのは、事業収益だけでなく賃貸不動産の価値が市場評価へ十分反映されていなかったことと関係する。特別委員会の算定では不動産鑑定を織り込んだ上で鉄構事業のDCFを組み合わせており、資産保有会社を単純なPERや直前株価だけで測る危うさを示す案件である。
読みどころ
非公開化は、収益化まで時間のかかる新型貯槽の研究、溶接・検査の自動化、外部技術の導入を四半期業績から切り離せる。ただし研究テーマ数では成果にならない。水素・アンモニア案件の受注残、試作から商用化までの期間、自動化後の工数・不良率、案件別粗利、研究開発費を継続して見る必要がある。
組織面では大型プロジェクトを統括できる人材の採用育成が要となるが、非公開化で採用力が自動的に上がるわけではない。技術者数、資格保有者、管理可能な同時案件数、離職率、外部提携から得た技術の内製化を測り、社長主導の意思決定が現場能力へ転換したかを検証したい。
8,364円は終値比185.17%で、6,908円の初回提案から1,456円引き上げられた。最終価格は野村DCF上限8,268円を96円、プルータスDCF上限8,108円を256円上回り、類似会社比較上限7,946円も超えた。極端な市場プレミアムだけを見ると過大に映るが、対象会社と特別委員会の将来価値評価の上限を上回った点、含み益を交渉材料にした点まで含めれば、少数株主側が相応の価値を回収した結果と評価できる。
経営者が買い手となるMBOでは、業績計画を知る側と売る株主の情報差が最大の論点となる。本件は創業家応募分を除く少数株主の過半数を超える下限を設け、特別委員会の独自DCFと6段階の価格交渉を用いた。最終応募は下限を345,611株上回り、残存株主にも株式併合で8,364円相当を交付する設計となった。