案件タイプ
日立造船は開始前から過半数を持ち、対象会社を支配していた。従ってTOBの役割は経営権の新規取得ではなく、合併前に外部株主を減らして再編手続きを進めやすくすることだった。54.58%から91.35%への増加幅は大きいものの、公開買付け終了時点では少数株主がなお残った。
2月1日から3月4日までの買付け、4月25日の合併基本合意、10月の吸収合併という順序が確認できる。同年10月には祖業の造船事業もユニバーサル造船へ移管しており、エイチイーシー統合は会社全体が事業境界を組み替えた転換期の一部だった。
読みどころ
親会社が90%超を先に確保すれば、合併への反対や株主構成の不確実性を抑え、グループ内の事業・人員・資産を一体で運営しやすくなる。造船事業を外へ移す一方でエイチイーシーを本体へ取り込んだ動きからは、残す機能を集約するポートフォリオ再編だったと読める。ただし具体的シナジー額は資料にない。
91.35%で止まった後も吸収合併へ進めた点は、TOBだけで全株を集める設計ではなかった可能性を示す。残余株主の処理は合併対価や株式割当の条件に依存するため、330円の現金買付けと合併時の経済条件を同じものとして扱えない。今回の資料では合併比率を確認しておらず、両段階の公平性比較はできない。
1株330円は専門紙の開始記事で確認したが、公表前株価、平均株価、純資産、第三者算定の情報がない。そのため330円が一般株主にどの程度の上乗せを与えたかは不明である。後続合併が予定されていたなら、応募判断には合併対価との比較も重要になるが、現資料だけで有利不利を推測しない。
株主には330円で早期に現金化する選択肢があり、非応募者は91.35%を持つ親会社の下で10月の合併へ進む立場となった。合併が事前にどの程度予見可能だったか、対象会社取締役会が価格や合併をどう評価したかは重要だが未確認である。退出時期による対価差がなかったかも、追加資料なしには評価できない。